【純セレブスピーカー誕生秘話】

片岡 祐介


事の発端は、2018年4月に安冨歩さんが新車を購入したことにあります。

新車に内蔵されている純製オーディオの音質を気に入らなかった安冨さんが、別のカーオーディオをオプション的に購入して付け替えました。ディーラーに「これ捨てますか?」と訊かれた取り外し済みのスピーカーユニットを「勿体ない」と感じた安冨さんは、そのユニットを持ち帰り、片岡に「これ要らない?」とメールしました。片岡がオーディオ関係の簡単な電子工作をすることを知っていたからです。

片岡は「今は特に要りません」と回答。安冨さんは「これアンプにケーブルで繋ぐと音出るの?」と質問。片岡は「プラスマイナスを揃えてつないでください。ダンボール箱に穴を開けてユニットを差し込むと楽に作れますよ」と助言しました。それくらい初歩的な感じから始まっています。(片岡もその時点で、ダンボール箱を使ってスピーカーを作ったことはまだ一度もなかったのですが、ダンボールの音響特性の良さは打楽器奏者としての経験上知っていたので、直感的ではありますが無根拠に答えたわけではありません)

そして、ダンボール箱が空洞のままだと、余分な箱鳴りが発生して「雑味のある音」になりがちだと思った片岡は「箱の中にクシャクシャにした紙を入れてください。できるだけいろいろな種類の紙を混ぜてください」とメールしました。特定の高さの音(周波数)だけが強調される現象を防ぐためです。

その日のうちに全部を実行した安冨さんから「すごくいい音がしている!」と興奮したメールが届きました。その時点で片岡は「きれいな音をしていると思われるけど、どれほどのものかは、聴いてみないとわからないなあ…」くらいの感想でした。

後日実際に聴いてみてビックリ! これが歴史的な「純セレブスピーカー第一号機」です。アンセルメ指揮のラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」のうっとりするような管弦の混ざり具合(&分離の良さ)は今も忘れられません。

(笑っちゃうような話なんですが、その後研究をすすめて沢山の純セレブスピーカーを製作した中でも、結果的に、第一号機は最高級の出来でした。カーステレオ用のスピーカーユニットが純セレブスピーカーにとても向いているらしいことも、後になって分かりました)